グリセリンでニキビは増えるのか?!

化学イメージ画像

グリセリン

ネットの情報で、化粧水に含まれる保湿成分「グリセリン」でニキビが増えるという記事がありました。グリセリンフリーというキャッチコピーで売られている商品もあります。

アトピーや敏感肌の方に向けて皮膚科でも処方されることが多い「グリセリン」。「グリセリン」で本当にニキビが増えるのでしょうか?
そんな疑問に敏感肌の専門家が解説いたします

情報の発端はある製薬会社の実験結果

「グリセリン」でニキビが増えるという根拠はどこにあるのか調べてみると、株式会社サティス製薬さんが発表した「アクネ菌の保湿剤に対する資化性」のデータによるものです。
このデータは、保湿剤の成分15種類の中で、それぞれの成分でアクネ菌がどれだけ増えたかを測定したデータです。

下記のグラフをみると、15種類の保湿剤の中でダントツにグリセリンでアクネ菌が増えていることがわかります。
ネットでの情報はこれを根拠に「グリセリンでニキビが増える」を言っているわけです。一見、確かにそういう結果に見えるかも知れません。
注)株式会社サティス製薬さんはグリセリンでニキビが増えるとは言っておられません。

アクネ菌の保湿剤に対する資化性

15成分名:無添加、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、3-メチル-1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、トレハロース、D(+)-グルコース、D-ソルビトール1,3-プロパンジオール、キシリット、DL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、トリメチルグリシン、ラフィノース、グルコシルトレハロース/水添デンプン分解物混合溶液

この実験を詳細に検証してみました

上の表の結果だけをみると、グリセリンが一番悪者にみえます。他の成分と比べてもダントツに増えていますので。しかし、この比較実験の内容をよく見てみますと、比較している保湿剤の成分はすべて水溶性の保湿剤です。
保湿剤は、上記のような水溶性の保湿剤の他に油性の保湿剤があります。ここでは、油性の保湿剤には触れていません。

皆さんもご存知の方が多いと思いますが、ニキビ肌の方が避けるべき化粧の成分は油(オイル)です。
今までの研究で、アクネ菌は圧倒的に油性を好むことが知られています。よってオイルフリーという商品が売られています。

上記の実験で、油性の保湿剤も含めて実験をやると結果は大きく変わると思います。圧倒的に油性成分の方がアクネ菌は増えるでしょう。数値的に何倍多くなるかはわかりませんが、比較にならないほど差がでると思います。

またこの実験は、ビーカー内での試験であり、実際の人の肌での試験ではありません。よって人の肌で試験した場合同じ結果になるとも限りません。

それに加えて、ニキビの治療薬にはグリセリンを含むものも多くあります。治療薬は、実際の人肌でニキビが改善されたことを確認して認可を受けています。グリセリンを含むことでニキビが改善しにくくなるという報告はないです。皮膚科の先生にも確認をとりました。

ニキビ治療薬 ベピオゲル2.5%の写真

添加剤:1g中 過酸化ベンゾイル 25mg
添加剤:1,3-ブチレングリコール、グリセリン、カルボキシビニルポリマー、エデト酸ナトリウム水和物、pH調節剤

ニキビの原因をあらためて確認

上記のグラフのデータは、2009年、すなわち16年前のデータです。その当時のニキビの原因と考えられていたのはアクネ菌です。
アクネ菌が増えるとニキビが出来ると考えられていました。しかし、最新の研究では、ニキビの原因は毛穴が詰まり、詰まった毛穴の中でアクネ菌が増え炎症が起きることが原因とされています。アクネ菌が増えただけではニキビはできないのです。

ニキビの出来る仕組みのイラスト

ニキビができる過程

  1. まず毛穴が詰まる。
  2. 毛穴の中の角質が剥がれ皮脂と混じり角栓ができる。油性の保湿成分も毛穴を詰まらせる。
  3. アクネ菌が増殖する
  4. 毛穴の中に空気がなくなり、皮脂が溜まるのでアクネ菌が増える環境が整う。
  5. 炎症が起こる
  6. 毛穴の中にアクネ菌が増えすぎて炎症が起こる。アクネ菌は空気に触れると死滅するので、毛穴が詰まらなければ、炎症を起こすほど増え続けることはない。

グリセリンでニキビは増えるのか?結論

結論から言いますと、グリセリンでニキビは増えません。
上記のグラフの研究結果で水溶性保湿剤の中でグリセリンでアクネ菌が一番増えたことは事実です。
しかし、油性の保湿剤との比較をしていませんし、この研究で、グリセリンでニキビは増えるとは一言も書かれていません。

ニキビ肌の方にとっては、油性の保湿剤などを避けることの方が重要であり、水溶性の保湿剤は、水で簡単に洗い流すことができることから、毛穴を詰まらせる可能性もほぼありませんので、ニキビが悪化する要因と考えるのは少し無理があります。

また、ニキビの治療薬にもグリセリンが使われることから、グリセリンでニキビが増えるというのは根拠が乏しすぎます。
ニキビの治療薬はビーカーレベルの試験ではなく、実際の人の肌によってニキビの改善を確認していますので、そういう点からもグリセリンでニキビが増えるということはないと考えることができます。

インフルエンサーが単純に間違った情報を拡散しているのか、あるいは、グリセリンフリーの化粧水を売るための仕掛けをしているのかはわかりませんが、グリセリンでニキビが増えるというエビデンスはありませんので、ご安心を!

ロクワットオンラインショップTOPへ

関連記事